坐骨神経痛は、おしりから足の下肢に起こる痛みやしびれのことです。実は病名ではなく、痛みやしびれが出る原因もさまざまあるのです。
- おしりから太ももの邦に痛みがある
- 長時間の立ち姿勢がつらい
- 痛みが強くて座り続けられない
- 体をかがめると強い痛みが出る
- 腰を反らすと痛みやしびれが出る
このように、坐骨神経痛の症状は人によって大きく異なります。上記の症状に1つでも当てはまるのならば、坐骨神経痛に該当する可能性があります。
坐骨神経痛の原因
坐骨神経は名前のとおり、おしりから下肢の部分を通る神経のことです。この神経は「総腓骨神経 (そうひこつしんけい)」と、「脛骨神経 (けいひこつしんけい)」の2つがあり、おしりから足の指にまで伸びる長いものです。
坐骨神経が圧迫されるなど何らかの原因で、神経に影響が出るとおしりから下肢にしびれや痛みが生まれるのです。
椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛
坐骨神経痛が起きる主な原因は、椎間板ヘルニアによる痛みです。
腰の部分にある椎間板がつぶれて飛び出してしまうことで、腰椎の神経が圧迫されて坐骨の痛みにつながるのです。
これは中腰の動作や、横座り、猫背などの日頃の癖によって引き起こされるのです。たとえば、重い物を持つ仕事や、中腰で過ごす時間が多い家事といった原因で、椎間板ヘルニアになってしまうのです。
椎間板ヘルニアは20代に多いですが、年齢を重ねて筋肉量が減少しても引き起こされます。
特におしりの筋肉が衰えていると、中腰などの動作で体に負担がかかり、椎間板が飛び出す原因につながります。
腰部脊柱管狭窄症が原因の坐骨神経痛
坐骨神経痛で50台以上に多い原因が、加齢によって脊柱管が狭くなり神経を圧迫する腰部脊柱管狭窄症です。
特に腰をひねったり、背筋を伸ばすなどの反らす動作で痛みが出やすいところが特徴です。また、高いところを取る動作なども、痛みが出やすい特徴があります。
前かがみになると比較的痛みがおさまるため、猫背が進行しやすいところにも注意が必要です。
自分でできる坐骨神経痛の治し方
坐骨神経痛は放置すると、どんどん痛みが増してしまい、最悪の場合歩けない、立てないといった命に係わる状態になってしまいます。
しかし、すぐさまに痛みを取って根本的に治すことは難しく、普段の習慣の見直しが重要な症状なのです。
坐骨神経痛は適度な運動や、姿勢改善がもっとも治すうえで大切なポイントです。
医者に通うだけでなく、自分でできる治療方法を取り入れていきましょう。
腰部脊柱管狭窄症による坐骨神経痛の治し方
50台以上に多い、腰部脊柱管狭窄症による痛みを緩和するには、自転車による運動がおすすめです。
自転車だと適度に前傾姿勢になるため、神経や血管の圧迫が減り痛みが落ち着きやすいのです。
自転車は無理なくできる有酸素運動で、1日あたり15~20分の運動でも十分に全身の筋肉を動かせます。筋肉のポンプ作用によって、血流が良くなると同時に腰回りを気遣いながら有酸素運動ができるのです。
ただし、いきなり自転車に乗ると関節に負担がかかる可能性があるため、事前に軽い柔軟運動を行いましょう。
椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の治し方
椎間板ヘルニアは筋肉をほぐすストレッチ、体をきちんと支えるための体幹トレーニングが有効です。
これを物理療法と呼び、体幹を鍛えることで腰への負担が減り症状の緩和につなげるのです。
体幹トレーニングは自宅にいながら5分からできる運動です。まずは軽いストレッチで筋肉をほぐし、体幹トレーニングを行って、少しずつ筋肉をつけていきましょう。
痛みが強いときは、コルセットの着用などをしながら腰の負担を減らしつつ、リハビリしていきましょう。
坐骨神経痛の痛みを緩和する方法とは
坐骨神経痛は手術などで根本的に改善するよりも、自分に合った方法で腰への負担を軽減することが大切です。
緩和する方法として取り入れられている治療法をご紹介します。
血流を改善するための温熱療法
自宅でもできる治療方法が、血流を改善するために患部を温める温熱療法です。温熱療法は温かいお湯にその部分をつけて、深部からゆっくりと暖める方法です。
入浴によってしっかりと下肢を暖めて、血流を改善することにより痛みの軽減につながるのです。また、同時にカイロなどを貼るといった、普段から体を冷やさない行動も大切です。
医者による専門的な温熱療法では、赤外線で温める乾熱式、温泉両方の湿熱式などがあります。
また、血行促進のために温めながら患部を摩擦、軽く叩くなどの刺激を加える方法も取り入れられています。
筋弛緩薬などの内服薬の処方
痛みが強く、体のこわばりが続いているときは筋弛緩薬を内服することもあります。神経痛によって体が凝り固まっていたり、思うように動けなかったりすると、ますます血流が悪化してしまうのです。
それを防ぐために、筋弛緩薬を飲んで動きの制限をできるだけ取り除き、血流が悪くならないようにサポートする治療法です。
シップや薬などの外用薬
痛みに対するケアとしてシップや塗り薬の外用薬を使うケースもあります。外用薬は医師による処方だけでなく、市販薬でも気軽に導入できることがメリットです。
シップなど痛みを一時的に和らげる方法を取り入れれば、日常生活の不具合の解消につながります。
根本的な解決にはならないものの、今強い痛みがある人にとっては痛みを和らげるための外用薬を適度に活用することは、生活の質を落とさないために重要なポイントです。
神経ブロック注射
神経ブロック注射は、痛みが強い部分の神経まわりに麻酔薬を注射する方法です。腰やひざ、手足などの全身に使用でき、強い痛みによって動けない方、今すぐ手術などで長時間休めないといった方に使われます。
一時的に痛みを取り除くだけでなく、負担がかかった筋肉を休めて神経を落ち着ける効果が期待できるのです。
神経ブロック注射は痛み止めによって、痛みを取り除くことでようやく体が痛みで興奮せず、筋肉の緊張が落ち着きます。
血行の悪化を防ぐ効果も期待できるため、坐骨神経痛の治療法として導入されています。
坐骨神経痛の人がやってはいけない5つの行動
坐骨神経痛の予防、対策には、日頃から腰まわりに負担がかかる行動を控えることが大切です。
坐骨神経痛を悪化させないために、知っておきたいやってはいけない行動をご説明します。
運動をやめてしまう
坐骨神経痛があるからといって、体を動かさない期間が続くとさらに筋肉が硬直してしまいます。坐骨神経痛は血行の流れが悪くなると、痛みが強くなるのです。
さらに体を動かさずに筋肉が硬直する悪循環になってしまうため、運動をやめずに適度に体を動かしましょう。
今痛みが強くまともに歩けない、動けない状態ならば、痛み止めや神経ブロック注射といった痛みを取り除く治療が望ましいです。
適度に薬を使いながら、ストレッチなどで体を動かしていくことが、坐骨神経痛の改善へとつながるのです。
長時間同じ体勢で過ごす
坐骨神経痛は長時間座りっぱなし、立ちっぱなしといった、同じ姿勢で居続けることが負担になります。
特に猫背の状態は、腰椎に負担がかかりヘルニアの原因になります。下を向く姿勢なども猫背の原因になるため、日頃から姿勢を伸ばして過ごすことを意識しましょう。
また、できるだけ30分に1回は姿勢を変えるために、立ったり座ったりすることもポイントです。
それが難しい環境なら、1時間ごとに一瞬伸びをしたり、座ったままできるストレッチを行ったりして、血流が悪化することを予防しましょう。
重いものを持つ
坐骨神経痛は重い物を持ってしまうと、腰や関節に大きな負担がかかり痛みが強くなる原因になります。
無理した結果、回復が遅れる原因になるため、重い物を無理に移動させないよう注意しましょう。
たとえば運ぶ荷物があるのなら、一度に持つ量をできるだけ減らすなど、腰にかかる負担を最小限にすることがコツです。
ほかの人に頼んだり協力してもらったりと、無理をしないことが大切です。
激しい運動や有酸素運動
坐骨神経痛は運動不足による体の緊張、血流の悪化などが原因の1つです。そのため、坐骨神経痛を治そうと、いきなりジョギングなどの激しい運動を取り入れる人もいます。
しかし、いきなりランニングや筋トレなどの激しいトレーニングは、痛みやしびれが悪化する恐れがあるため避けましょう。
運動をしないのではなく、腰に負担が少ない軽めのウォーキング、少し体をほぐす程度のストレッチがおすすめです。
また、マッサージによって体の緊張をとることも、坐骨神経痛の緩和につながります。
体重を増やす
体重が増えてしまうと、腰などの関節への負担が増えてしまいます。特にお腹が重くなるとどうしても反り腰になるため、痛みが増す原因につながります。
体重が増えれば体を動かすことそのものが、億劫で運動不足が悪化する結果にもなってしまうのです。
姿勢をきれいに保ちづらくなるため、体に負担をかけないためにも体重を増やさないように、無理のない範囲の運動と、食事制限を取り入れることをおすすめします。
痛みがひどいときは痛み止めを使おう
坐骨神経痛は原因を取り除かなければ、根本的な治癒は難しいものです。
しかし、痛みを放置したままでは日常生活に影響が出てしまい、ますます痛みが強くなる苦しい状況に陥ってしまいます。
だからこそ、痛みがひどいときは我慢しすぎずに、痛み止めを活用しましょう。
痛み止めは神経の興奮をおさえて、痛みを和らげる種類などがあります。
神経性の痛みに有効な医薬品は、坐骨神経痛の痛みの緩和におすすめです。ただし、痛み止めは用法容量を守らないと、副作用のリスクもあります。
痛み止めに頼りきらずに、日頃の生活改善や医師との相談なども大切です。
まとめ
坐骨神経痛は20代など若い世代にも多い症状です。即座に改善する有効な治療法はなく、症状が進めば最悪の場合神経を取り除く、椎間板ヘルニアの手術といった大がかりな治療が必要になるケースもあります。
だからこそ、普段から姿勢に気をつけつつ、坐骨神経の負担を軽減する習慣を身に着けていきましょう。場合によっては神経痛を和らげる痛み止めの服用もおすすめです。