糖尿病は、日本人にとって身近な成人病です。糖尿病を一度発症してしまうと、基本的には生涯にわたってインスリンの投与が必要になってしまうのです。
糖尿病は症状に気づきにくいからこそ、できるだけ早めに異変に気づくことが重要です。糖尿病自体は知っていても、症状がわからなければ治療をすぐにはじめられません。
この記事では糖尿病の初期症状や、糖尿病を防ぐための対策についてご紹介します。
糖尿病とはどういう病気?
糖尿病は血中の血糖(血中のブドウ糖のこと)が、通常よりも高い状態が続く病気のことです。
この血中の糖分は、インスリンという膵臓から分泌されるホルモンによって、調整されています。通常は一定以上の血糖値にはならないように、コントロールされていますが血糖値をうまくコントロールできない状態になってしまうのです。
糖尿病自体は痛みや苦痛をともなうものではありません、糖尿病が怖いところは、血糖値の乱高下や血糖値が高いままで放置されていると、やがて糖分によって血管が傷ついてしまうなどの合併症です。
高血糖状態が続くことで、様々な健康問題が発生する可能性があります。主な糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病があります。
1型糖尿病
1型糖尿病は、免疫系が自身の膵臓のベータ細胞を攻撃し、インスリンを作り出せなくなる自己免疫疾患のことです。
インスリンの分泌低下は、先天的なものもあれば、何らかの疾患で起こります。血糖を適切に処理するためのインスリンが不足し、血中の糖分が適切に利用されなくなります。1型糖尿病は通常若い年齢で発症し、一生涯にわたるインスリン治療が必要です。
2型糖尿病
2型糖尿病は、体が作り出すインスリンをうまく利用できなくなる状態です。だんだんインスリンの働きが聞きづらくなり、血糖値が高いままになってしまうのです。
2型糖尿病の原因は遺伝的な部分もあれば、食べ過ぎや運動不足、肥満といった環境的な影響が大きいのです。
そのため、すべての患者に当てはまるものではありませんが、2型糖尿病は健康的な生活習慣を保つことで予防できるとも言えるのです。
糖尿病は慎重な管理が必要であり、早期の発見と治療が合併症の予防になります。日常的な血糖モニタリング、適切な食事管理、運動、薬物療法など、生活習慣の見直しを中心とした指導と治療によって、多少症状が改善することもあるのです。
糖尿病の初期症状
糖尿病の初期症状は、血糖値の異常が現れる前段階であり、早期発見と治療をすることが重大な合併症を防ぐうえで欠かせません。
以下は、糖尿病の初期症状の一部です。すべての人に当てはまるものでないものの、思い当たることがあれば健康診断を受けるなどして、早めの治療をスタートしましょう。
1. 喉が渇きやすくなる
糖尿病において、高血糖の状態が続くと、尿中に余分な糖分が排泄されます。その際に体内の水分も失われることで、すぐに喉が渇いてしまうのです。
特に汗をかいたわけでもないのに、水分をとっても喉の渇きが気になる人は、糖尿病の検査を受けてみましょう。
2. 頻尿になる
糖尿病は高血糖の状態が続くため、余分な糖分を外に出そうと頻尿になりやすくなります。その際尿に排泄された糖分により、体内の水分が失われることで尿量自体が増加するのです。
以前よりもトイレが近くなったり、尿意が我慢できなくなったりと、排尿の悩みが増えたのなら注意が必要です。
3. だるさや疲れやすさが続く
糖尿病により、細胞が十分なブドウ糖を取り込めなくなるため、エネルギー不足が生じます。すると食事をとっても常にだるい、疲れやすいといった体力がない状況が続くのです。
慢性的な疲れを感じているのなら、一度検査を受けてみましょう。
4. 食べていても体重が減る
細胞がブドウ糖を十分に利用できず、そのまま排出されてしまいます。糖尿病になってしまうと、同じ食事量でも、どんどん痩せていってしまうのです。
特にダイエットをしていない中で、体重減少が続いている状況があれば健康に十分注意しましょう。
5. 皮膚が乾燥しやすい
糖尿病による高血糖は、肌にも大きく影響します。肌は糖化と言って、高血糖の状態が続くと少しくすみがかった色に変化します。
また、皮膚の水分保持機能を損なう可能性があり、それが乾燥した肌を引き起こすことがあるのです。
6. 傷の治りが遅い
血糖値の不調により、血液がうまく働かずに傷口の治癒力を低下させてしまうのです。そのため、怪我や傷口がなかなか治らない場合は、糖尿病のサインの1つと言えます。
これらの症状が現れた場合、早期に医療機関での検査や診断を受けてみましょう。原因がわかれば、治療を早くスタートできます。糖尿病はきちんと対処すれば、命を落とさずに健康的に過ごせる可能性が十分にあります。
だからこそ症状を放置しないで、適切な治療を開始しましょう。
糖尿病の合併症の症状
糖尿病で命を落とす危険があるのは、合併症による症状です。どんな症状が起きるのか、リスクとともにご説明します。
1. 目のかすみ・視力が落ちる
目のかすみや視力の低下が見られるのは、「糖尿病網膜症」という合併症の可能性があります。
これは糖尿病による高血糖が、目の網膜にダメージを与えるため。高血糖によるダメージを受け続けると、やがて視力低下のリスクがあるのです。
最悪の場合、糖尿病網膜症は失明する事態になってしまいます。視力を失うという状況を防ぐためにも、合併症まで発展する前の治療と健康習慣の心がけが大切です。
2. 手足のしびれや痛み
手足にしびれや痛みが感じられるのは、「糖尿病神経障害」の合併症で起こりやすい症状です。これは高血糖が神経に影響を与え、末梢神経が損傷することで引き起こされます。
末梢神経が傷つきと、手足の感覚が鈍くなることもあり、動かすたびにしびれるといった慢性的な違和感の元なのです。
3. 立ち眩みやめまい
糖尿病は自律神経にも影響を与えます。特に血圧調整がうまくいかなくなり、極端な低血圧や高血圧になりがちです。
すると、立ち上がるときにめまいや立ちくらみを起こしやすく、そのままケガのリスクも高まるのです。
4. 感染症にかかりやすい
頻繁に感染症にかかるのは、糖尿病による免疫機能の低下が関係しているケースがあります。
高血糖が免疫機能を低下させ、感染症に対する抵抗力が弱まってしまうのです。すると風邪やインフルエンザなどがいつまでも治らずに、そこから肺炎など命に関わる疾患に発展することもめずらしくありません。
5. 手足がむくみやすい
手足がむくみやすい状況は、「糖尿病性腎症」という腎臓の不調の可能性があります。これは糖尿病によって腎臓の働きが弱まり、本来のデトックス効果が発揮されない状況です。
余分な水分や塩分が体に蓄積され、むくみが生じてしまうのです。するとさらに腎臓をはじめ、内臓に負担がかかり、大きな病気のリスクにつながっていきます。
糖尿病リスクが高い人の習慣とリスク因子
・運動不足
・朝食を食べない
・夕食が遅い
・早食い
・喫煙者
・アルコールを多く飲む
・体重が急激に増えた
・高血圧症
・糖尿病の家族がいる
糖尿病リスクは遺伝的なものだけでなく、日頃の食事や運動習慣で影響されるものがあります。
特に2型糖尿病は生活習慣の問題の可能性があるため、上記に思い当たることがあれば習慣の見直しを考えましょう。
血糖値を急上昇させるのは、食事同士の間隔が空いており一度に食べ物が入ってくることで起こります。ほかにも砂糖が多いおやつなど、間食も高い血糖値を維持し続ける原因なのです。
また、アルコールや喫煙も血管に負荷をかけて、糖尿病を引き起こす要因になるため、健康管理のためにもできるだけ控えましょう。
糖尿病の予防方法
糖尿病の予防には、健康的な生活習慣が何よりも大切です。一度糖尿病になると、生涯にわたって治療が必要になるケースがめずらしくありません。
今生活習慣が乱れていると感じるのなら、健康的な日々のためにも過ごし方を見直してみてはいかがでしょうか。
1. 健康な食事習慣の重要性
食事は食物繊維が豊富なものや、糖質の吸収スピードがゆるやかな低GIの食品を意識しましょう。
たとえば同じ糖質でも、精米されている白米よりも玄米やそばの方が、血糖値の上昇はゆるやかです。さらに食物繊維も豊富なため、デトックス効果が期待できるのです。
また、野菜を中心とした食事など糖質が少ない食材を中心に、メニューを考えることもポイント。過剰なカロリー摂取を避け、適切な食事制限を行うことで、体重をコントロールし、糖尿病の発症リスクを低減します。
2. 適切な運動と体重管理
歩く、走る、水泳などの有酸素運動は、血糖値の調整に役立ちます。糖尿病は運動不足による血流の悪化や、エネルギー源である糖質を消費しないことが、原因の1つです。
そのため、意識して歩くことを心掛けて、階段の上り下りや徒歩移動、自転車通勤などを取り入れてみましょう。また筋力をつけることで、体内の血糖を効果的に利用できるようになります。
3. 定期的な健康診断
血糖値モニタリングは、糖尿病の早期発見になります。血糖値を自宅で計測できるお手軽な機器も増えており、定期的な血糖値の測定は糖尿病の進行を防ぐのです。
また、病院で定期的な検査を受けることも重要です。健康診断では脂質検査を行い、脂質異常症がないか調べます。脂質異常症があると、糖尿病の合併症リスクが増加するため、早めの治療が必要なのです。
これらの生活習慣を実践し、リスク要因をコントロールすることで、健康な生活を送りましょう。
まとめ
糖尿病は遺伝的な要因もありますが、暴飲暴食や肥満といった生活習慣の乱れでも引き起こされてしまいます。
だからこそ、日頃から健康的な生活を心掛けることが、糖尿病予防になるのです。また糖尿病と思われる症状があれば、すぐに診察を受けることも糖尿病の悪化を防ぎ、安定した健康のために重要です。