医師監修:糖尿病初期に選ぶべき治療薬とは
監修:医師・薬剤師監修
はじめに
糖尿病は「気づいたら進行していた」というケースが多く、初期段階での治療開始が何よりも重要です。血糖値がやや高めでも、放置していると合併症(腎臓・神経・目の障害)が進行するため、早期に適切な薬を選ぶことが予後を左右します。
本記事では、糖尿病初期に選ばれる代表的な治療薬の特徴や作用機序、実際に使ってみた患者の体験談まで、医師の立場から詳しく解説します。
糖尿病初期の治療方針
糖尿病の初期は、まず生活習慣の改善(食事・運動)が基本です。しかし、食事制限だけでは血糖コントロールが難しい場合、薬物療法を併用します。ポイントは、「血糖値を下げるだけでなく、膵臓の負担を軽減する薬を選ぶ」ことです。
主な初期治療薬の種類と特徴
① メトホルミン(商品名:メトグルコなど)
糖尿病初期に最もよく処方される薬です。肝臓での糖の産生を抑え、インスリンの効きを良くします。体重増加を防ぎながら、心血管リスクも下げる点が評価されています。
メリット:体重増加が少ない、低血糖リスクが低い
デメリット:胃の不快感や下痢が出ることがある
② DPP-4阻害薬(商品名:ジャヌビア、トラゼンタなど)
体内のインクレチンホルモンを増やし、食後の血糖上昇を抑える薬です。日本人の体質(インスリン分泌不足型)に合っており、メトホルミンと並んで初期治療の第一選択肢となっています。
メリット:副作用が少なく、長期使用しやすい
デメリット:体重や血糖値への変化がゆるやか
③ SGLT2阻害薬(商品名:ジャディアンス、ルセフィなど)
尿中に糖を排出させて血糖を下げる薬です。むくみや高血圧の改善、体重減少効果も期待でき、近年注目されています。
メリット:体重・血圧を下げる副次効果
デメリット:脱水・尿路感染のリスク
④ α-グルコシダーゼ阻害薬(商品名:グルコバイ、ベイスンなど)
小腸での糖吸収を遅らせ、食後高血糖を防ぐ薬です。食事の影響が大きい人に向いています。
メリット:食後血糖をコントロールしやすい
デメリット:おならや腹部膨満感などの消化器症状
体験談
Eさん(40代:男性)は、健康診断でHbA1cが6.9%となり、糖尿病予備群と診断されました。生活改善に加えてメトホルミン500mgを1日1回から開始。最初の1週間は軽い下痢がありましたが、2週目以降は落ち着き、3か月後にはHbA1cが6.1%に改善しました。体重も2kg減り、「疲れにくくなった」と実感。医師から「この段階で薬を始めたのは正解」と評価されました。
医師が語る:初期治療薬の選び方
糖尿病治療のポイントは、「早く始めて、続けやすくする」ことです。薬の選択は年齢・BMI・腎機能・心疾患リスクによって異なります。
- 肥満タイプ → メトホルミン、SGLT2阻害薬
- やせ型タイプ → DPP-4阻害薬
- 食後高血糖が強い → α-グルコシダーゼ阻害薬
また、初期段階で複数の薬を少量ずつ組み合わせることで、副作用を抑えながら安定したコントロールを目指すこともあります。
副作用と注意点
どの薬にも副作用はありますが、多くは一過性です。特に注意が必要なのは、腎機能の低下や脱水。夏場のSGLT2阻害薬使用時は、こまめな水分補給を意識しましょう。また、メトホルミンは腎機能が悪い方には慎重投与が必要です。
まとめ
糖尿病初期における薬の選択は、「どの薬が強いか」ではなく、「自分の体質・生活に合うか」で決まります。医師と相談しながら、自分に最適な治療プランを見つけることが、長期的な血糖コントロールの鍵です。
本記事は一般的な医療知識および臨床経験に基づいて作成しています。治療薬の選択や服用に関しては、必ず医師・薬剤師に相談してください。

