医師が解説:ADHD薬の耐性と飲み方調整
監修:医師・薬剤師監修
はじめに
ADHD(注意欠如・多動症)の治療に用いられる薬には、ストラテラ(アトモキセチン)やコンサータ(メチルフェニデート)などがあり、集中力の改善や衝動性のコントロールに有効です。しかし、「最初はよく効いたのに、だんだん効果が薄れてきた気がする」「飲み方を変えたほうがいいの?」といった声も少なくありません。本記事では、ADHD薬における“耐性”のメカニズムと、医師の立場から見た安全な飲み方調整のポイントを詳しく解説します。
ADHD薬の種類と作用機序
ADHD治療薬は大きく分けて次の2タイプがあります。
- 中枢刺激薬:コンサータ、ビバンセなど。脳内のドーパミン・ノルアドレナリン濃度を高めて集中力を改善。
- 非刺激薬:ストラテラ、インチュニブなど。神経伝達物質のバランスを整え、安定した効果を持続。
これらは一見似たような薬に見えますが、作用する経路が異なるため、耐性のつき方にも差があります。
耐性とは?
「耐性」とは、同じ量を服用しても徐々に効果が薄く感じられる現象です。体が薬の刺激に慣れてしまうことで、脳内の受容体や神経伝達の反応性が変化します。
ADHD薬では、特に中枢刺激薬(コンサータ・ビバンセ)でこの傾向が見られやすいとされています。一方で、ストラテラやインチュニブなどの非刺激薬は、比較的耐性が起こりにくいといわれています。
耐性が起きやすいケース
- 服用量を早く増やしすぎた
- 不規則な服用(飲んだり飲まなかったり)
- 睡眠不足・過労による神経疲労
- ストレス過多によるホルモン変動
実際、服用スケジュールが乱れている人ほど効果の波が出やすく、「効かなくなった」と感じる傾向があります。
実体験:服用3か月で効果が落ちたケース
30代男性Dさんは、仕事の集中力を高める目的でコンサータを服用。初期は「朝の切り替えがスムーズ」「業務効率が上がった」と感じていましたが、3か月目あたりから「午後に切れる感じ」「飲んでもぼんやりする」などの症状が出現。
医師に相談した結果、週に1〜2回の“服薬休み(ドラックホリデー)”を設けることで再び効果を感じられるようになりました。
医師が推奨する耐性対策
① 定期的な服薬見直し
ADHD薬は「量を増やす」だけが解決策ではありません。医師は3か月〜半年ごとに効果や副作用を評価し、必要に応じて用量・時間帯・薬剤を見直します。自己判断での増量は危険です。
② ドラックホリデー(休薬日)の活用
コンサータなど刺激薬では、耐性防止のために休日や休暇中に服用を休む「ドラックホリデー」が取り入れられることがあります。これは医師の管理下で行うもので、漫然と中断すると再発リスクが上がるため注意が必要です。
③ 睡眠と生活リズムの最適化
睡眠不足は薬の効き目を不安定にします。就寝・起床時間を一定に保ち、カフェインの摂取を控えることで、薬の効き方も安定しやすくなります。
④ 栄養・運動との併用
近年の研究では、タンパク質と鉄分を十分に摂ることでドーパミン代謝が安定し、薬の効果をサポートすると報告されています。軽い有酸素運動も集中力維持に役立ちます。
副作用と注意点
耐性が進むと、過量服用や依存につながるリスクも指摘されています。代表的な副作用は以下の通りです。
- 不眠・食欲低下(刺激薬系)
- 倦怠感・眠気(非刺激薬系)
- 血圧・心拍の変動
これらが続く場合は、薬の種類を切り替えるタイミングかもしれません。
まとめ
ADHD薬の耐性は「薬が効かなくなる」のではなく、「体が変化しているサイン」です。適切な休薬・服薬調整・生活改善を組み合わせることで、薬の効果を長く保つことができます。焦らず医師と二人三脚で、自分に最適なリズムを見つけることが大切です。
本記事は一般的な医療情報および臨床経験に基づいて作成しています。ADHD薬の使用や調整については、必ず医師・薬剤師に相談の上で行ってください。

