医師が語る：慢性的な脚のむくみの原因と対処法

監修：医師・薬剤師監修

はじめに

一日中立ち仕事やデスクワークをしていると、夕方には脚がパンパンに…。そんな「むくみ」は多くの人が経験しています。ですが、中には「朝起きてもむくみが取れない」「常に脚が重だるい」といった慢性的なむくみに悩む人も少なくありません。本記事では、医師の視点から慢性的な脚のむくみの原因と、自宅でできる対処法・治療薬の活用法まで詳しく解説します。

脚のむくみのメカニズム

むくみ（浮腫）は、血液中の水分が血管外へ漏れ出し、皮下組織に溜まることで起こります。特に脚は心臓から遠く、重力の影響で血液やリンパ液が滞りやすいため、むくみやすい部位です。

主な原因は次の通りです。

• 長時間の立ち仕事・座り仕事：ふくらはぎの筋肉が動かないため、血流が停滞
• 塩分過多：体内のナトリウム濃度上昇で水分をため込みやすくなる
• ホルモンバランスの乱れ：女性は生理前や更年期にむくみやすい傾向
• 冷え：血管収縮により循環不良が起こる
• 病的要因：心不全・腎臓病・静脈瘤などによるむくみ

慢性的なむくみを放置してはいけない理由

「むくみは疲労のサインだから休めば治る」と軽く考えがちですが、慢性的なむくみには注意が必要です。長期間続く場合、次のような疾患のサインである可能性があります。

• 下肢静脈瘤（血管弁の機能低下による血液の逆流）
• リンパ浮腫（リンパ管の損傷や閉塞）
• 心不全や腎機能低下（全身の循環異常）

また、むくみが慢性化すると皮膚が硬くなり、色素沈着や感染症（蜂窩織炎）のリスクも高まります。

医師が勧める日常ケア

① ふくらはぎを動かす

「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎを積極的に動かすことが重要です。オフィスでも、1時間に1回は立ち上がって軽くつま先立ちをするだけでも血流改善につながります。

② 塩分を控える

外食やコンビニ食には塩分が多く含まれています。味噌汁やスープは「具多め・汁少なめ」を意識し、カリウムを多く含むバナナやほうれん草で塩分を排出しましょう。

③ 睡眠時の脚の位置を工夫

寝るときにクッションなどで脚を少し高くすると、重力の影響を軽減できます。15cmほど心臓より高くするのが理想です。

④ 弾性ストッキングの活用

医療用弾性ストッキングは、足首からふくらはぎにかけて段階的に圧をかけ、静脈血の流れを促進します。立ち仕事や飛行機での移動時に特に有効です。

治療薬を使うケース

むくみが強く、日常生活に支障をきたす場合は利尿剤（例：ラシックス、スピロノラクトンなど）を用いることがあります。これらは体内の余分な水分を尿として排出し、むくみを軽減します。

ただし、利尿剤は電解質バランスの変化や脱水を引き起こすことがあるため、必ず医師の指導のもとで使用しましょう。

体験談：むくみが改善した例

40代女性Cさんは、夕方になると脚が重く、靴下の跡がくっきり残る状態でした。食生活を見直し、軽いウォーキングを始めたところ、1か月後には脚のだるさが軽減。医師の勧めでラシックスを短期間併用し、2か月後には見た目にもスッキリした変化を実感できました。

まとめ

慢性的な脚のむくみは、単なる疲れではなく、血流やリンパの異常が隠れていることもあります。まずは日常生活の見直しから始め、それでも改善しない場合は医療機関で原因を特定することが大切です。

適切なケアと治療で、むくみのない軽やかな脚を取り戻しましょう。

本記事は一般的な医学知識および臨床情報に基づいて作成しています。症状が続く場合や薬の使用を検討する場合は、必ず医師・薬剤師に相談してください。