糖尿病治療薬の飲み分け方を医師が解説
監修:医師・薬剤師監修
はじめに
糖尿病の治療は「食事療法」「運動療法」そして「薬物療法」の3本柱で進められますが、特に薬物療法では 複数の種類の薬を目的に合わせて飲み分けること が非常に重要です。血糖値を下げる薬と一言で言っても、その作用や適した場面は大きく異なります。本記事では、医師の視点から糖尿病治療薬の飲み分け方をわかりやすく解説します。
糖尿病治療薬の主な種類と特徴
① メトホルミン(ビグアナイド系)
もっとも一般的な糖尿病治療薬で、インスリン抵抗性を改善し、肝臓での糖産生を抑えます。肥満傾向のある2型糖尿病患者に特に有効。食後の急激な血糖上昇を抑えるのにも優れています。
② SGLT2阻害薬(ジャディアンス・フォシーガなど)
尿中に糖を排泄することで血糖値を下げる薬。体重減少効果や心血管リスクの低下が期待できるため、近年注目されています。脱水や頻尿には注意が必要。
③ DPP-4阻害薬(ジャヌビア・トラゼンタなど)
食後のインスリン分泌を自然に促す薬で、副作用が少なく高齢者にも使いやすいタイプ。単独での低血糖リスクが低い点がメリットです。
④ GLP-1受容体作動薬(リベルサス・ビクトーザなど)
食欲を抑え、胃の動きをゆっくりにすることで血糖値の急上昇を抑えます。体重減少効果が期待でき、肥満傾向のある人に向いています。吐き気が出やすい点には注意。
⑤ α-グルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ・ベイスン)
糖の吸収を遅らせることで食後の血糖上昇を防ぐ薬。食事の直前に服用する必要があります。おならが増えるなどの副作用はあるものの、食後高血糖が強い人に適しています。
飲み分け方のポイント
● 食後の血糖値が高いタイプ
食後高血糖が目立つ場合は、グルコバイやジャヌビア、GLP-1受容体作動薬が有効です。特に食事量が多い人、炭水化物が多い食生活の人に向いています。
● 空腹時血糖が高いタイプ
空腹時の血糖が高い場合は、肝臓からの糖産生を抑えるメトホルミンが基本。肥満傾向があればGLP-1やSGLT2阻害薬の併用も検討されます。
● 体重を減らしたいタイプ
ダイエット効果もほしい場合は、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬が相性抜群。最近はリベルサス(飲むGLP-1)の利用も増えています。
● 高齢者や副作用が心配なタイプ
副作用を避けたい人には、低血糖リスクが少ないDPP-4阻害薬が使いやすく、安全性も高めです。
医師目線で見た「よくある間違い」
- 「体重が落ちないから薬を増やす」という誤った自己判断
- 食事直後に飲むべき薬を、食後2〜3時間後に飲んで効果が出ない
- SGLT2阻害薬を飲んでいるのに水分摂取が不足する
- 低血糖を起こしやすい薬を他の薬と自由に併用してしまう
糖尿病治療薬は「合う・合わない」が大きく、正しい飲み方と組み合わせがとても重要です。
まとめ
糖尿病治療薬の飲み分けは、「血糖の上がり方」「体重」「生活習慣」「年齢」によって変わります。自己判断で薬を変えるのではなく、医師と相談しながら適切な薬を選ぶことが大切です。
本記事は一般的な医療情報および医師・薬剤師の知見に基づいて執筆しています。薬の変更や併用については必ず医療専門家に相談してください。
