あがり症治療薬の選び方:ベータブロッカーの仕組み
監修:医師・薬剤師監修
はじめに
「人前で話すと手が震える」「心臓の鼓動が速くなって声が出ない」――そんなあがり症(社会不安症)の悩みを抱える人は少なくありません。
緊張を和らげる薬として代表的なのが、血圧や心拍を落ち着かせるベータブロッカー(β遮断薬)です。
本記事では、ベータブロッカーの仕組みや効果的な選び方、実際に服用した人の体験談をもとに、あがり症に対する治療アプローチを医師の視点から詳しく解説します。
あがり症の正体とは?
あがり症は、単なる「緊張しやすい性格」ではなく、交感神経が過剰に働くことで起こる身体反応です。人前に立つ、発表するなどの状況でアドレナリンが急上昇し、心拍数の上昇・震え・発汗などが引き起こされます。
この「自律神経の暴走」をコントロールするのが、ベータブロッカーの役割です。
ベータブロッカーの仕組み
ベータブロッカーは、心臓や血管のβ受容体に働きかけ、アドレナリンの作用をブロックします。その結果、心拍数の上昇や血圧の急上昇を防ぎ、体の「緊張状態」を穏やかに保つことができます。
あがり症に使われる代表的な薬がインデラル(プロプラノロール)です。もともとは高血圧や不整脈の治療薬として開発されましたが、「緊張による震えを軽減する効果」が注目され、現在ではプレゼン前や試験、舞台前などの“シーン限定の服用”として広く使われています。
インデラルの特徴
- 効果発現時間:服用後30〜60分で効果が出始める
- 持続時間:3〜6時間程度
- 服用タイミング:本番の約1時間前
- 作用:動悸・震え・発汗の抑制、声の安定
実際の体験談
20代女性Aさん(会社員)は、プレゼン時の極度の緊張に悩み、医師に相談してインデラル10mgを処方されました。「最初は半信半疑でしたが、服用して30分ほどで心臓のドキドキが落ち着き、手の震えも止まりました。声が安定して話せたことで自信がつき、今では薬なしでも落ち着けるようになりました」と語っています。
あがり症に使われるその他の治療薬
あがり症の原因やタイプによっては、ベータブロッカー以外の薬が選ばれることもあります。
- 抗不安薬(ソラナックス、デパスなど):即効性が高く、強い緊張を和らげる
- SSRI(パキシル、ルボックスなど):社会不安障害に根本的にアプローチする長期治療薬
- 漢方薬(加味逍遙散、半夏厚朴湯など):体質改善を目的とした穏やかな治療
一時的な場面緊張ならベータブロッカー、慢性的な不安症状にはSSRI系やカウンセリング併用が有効です。
服用時の注意点
- 低血圧や徐脈(脈が遅い人)は使用に注意
- 喘息や心不全のある人は医師と相談が必要
- アルコールや他の薬との併用は避ける
- 効果を確かめたい場合は、本番前に試験的に使用しておくと安心
医師が語る:正しい使い方のポイント
「インデラルは“あがり症の特効薬”と呼ばれることもありますが、万能ではありません。重要なのは、“自分の緊張のパターン”を知ることです。身体反応(動悸・震え)中心ならインデラルが最適ですが、心の不安が強いタイプには抗不安薬や心理療法の併用が必要です」と専門医は語ります。
まとめ
ベータブロッカーは、あがり症による身体的な症状を抑える強力なサポート薬です。特にインデラルは短時間で効果を発揮し、安心して人前に立つための自信を与えてくれます。ただし、根本的な克服には心理的アプローチも欠かせません。薬を上手に活用しながら、自分に合った方法で“あがりにくい自分”を育てていきましょう。
本記事は一般的な医療情報および臨床経験に基づいて作成しています。薬の使用にあたっては、必ず医師・薬剤師に相談してください。

